7月3日の日経新聞に「補助金ゴールドラッシュの教訓、事業転換に銀行の力」という記事が出ていました。
どうも補助金関係の記事には敏感なので(笑)、つい読み込んでしまいました。
以下の様な記事になりますが、なかなか耳に痛い部分もあり、また我々支援者の今後の方向性を示していると思いましたので、今回ご紹介させて頂きました。
新型コロナウイルスの5類移行を受けて中小企業への支援が変わる。中小が事業再構築に取り組む費用を補助する制度では、売上高の減少という申請要件を撤廃した。コロナで苦しんだ企業の救済という色彩が薄まり、成長が見込まれる企業に重点的に資金を振り向ける狙いだ。
中小企業の生産性向上は日本経済の課題の一つだ。補助金や融資条件の緩和など政策対応が何度も取られたが、劇的な効果は出ていない。問題は補助金頼みの企業を生んでいることだ。事業再構築補助金の申請が始まった当初は「補助金を探し当てて企業が殺到するゴールドラッシュのような状況があった」と語る関係者もいる。
中小企業庁は6月30日、事業再構築補助金の第10回公募を締め切った。第10回から売上高の増減にかかわらず、事業転換や新事業に取り組む企業を対象とする成長枠をつくった。成長枠の補助額は最大7000万円で、補助率は事業の2分の1だ。これまでは売上高が減少した企業が対象だった。
危機対応という面は薄まりつつあり、政策効果が厳しく問われる段階に入った。3〜5年で付加価値額が年率平均で3〜5%以上増加しているかといった申請要件があり、中企庁は事後チェックにも力を入れるという。
事業再構築補助金は金額や補助率が大きく、中小企業にとって魅力的なのは間違いない。採択率はおよそ半数で、成功報酬が得られるコンサルティング会社間の競争は激しい。中小企業の経営者と一緒に事業計画を練ったり、進捗をフォローしたりするのが役割なのに、補助金の採択率をアピールし、申請を通すためのテクニックに走る会社もある。
埼玉県川口市にある武井工務店は事業再構築補助金を申請し、採択が決まった。補助金の申請や新事業の展開でいくつかのコンサルティング会社に相談を持ちかけたが、満足のいく回答が得られず、取引銀行だった埼玉りそな銀行に相談したという。
個人や企業からの新築やリフォームの注文が減っていたため、武井工務店は大工がつくったオーダーメード家具の販売事業を立ち上げることにした。既製の家具では間取りに合わないといった顧客の声があり、オーダーメード家具の需要が見込めると判断した。
ショールームの設置やオンラインショップの開設、販売促進費の一部をまかなう目的で補助金の申請に至ったという。埼玉りそなの子会社で、コンサル業務を手掛ける地域デザインラボさいたまの中嶋克幸氏は「経営トップの壁打ち相手となり、事業計画を数字に落し込んだりする話し合いの場を何度もつくった」と振り返る。地域デザインラボさいたまは補助金の申請支援だけでなく、マーケティングなど事業化後の支援も行う。
補助金行政には生産性の低い企業を温存し、新陳代謝が進まないという批判がある。東洋大学の野崎浩成教授は「どの企業がどういう技術を持ち、どういった問題を抱えているかといった情報を銀行が集積し、必要であれば事業売却や再編を進めるべきだ」と指摘する。「政策的な関与は基本的に不要だが、秘匿性に配慮した情報プラットフォームのようなものをつくってもよい」と提言する。
中小企業の経営者が高齢化し、後継者が不足するという人的な制約もあるなかで、生産性を高めるのは難しい。それでも従来の政策の繰り返しでは改善は望めない。
コロナ禍で業績が落ち込んだ企業を支援する実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化するタイミングでもある。補助金の効果を厳しくチェックするのはもちろんだが、銀行が持つ情報力や経営管理能力をもっと活用する手はある。