タイトル アフターコロナのマーケティング戦略 最重要ポイント40
出版社 ダイヤモンド社
著者 足立光/西口一希
価格(税別) 1,500円
中小企業経営者 ☆☆☆
中小企業診断士勉強者 ☆☆☆
<内容>
40個の論点を挙げてそれぞれに対して答える形式にしています。その中から興味深いものを挙げます。
論点11:優れた製品やサービスを提供すれば自然に売れるようになる。
回答:たとえどんなに製品やサービスが良くても、知られなければ、存在していないのと同じです。
だから伝える努力を怠ってはいけません。
結局、製品やサービスが売れるのは、買う人にとって具体的な便益があるかどうか、
そしてその便益に他の代替物や競合が提供できない独自性があるか、という2つの要素からでしかありません。
論点14:ブランド名が認知され、ブランドイメージが良くなれば、良く売れる。
回答:まずブランドを認知し、自分にとって便益や他にはない独自性(日代替性)を感じて、買いたくなります。
そして実際にお店などに行き、価格にも納得感があれば購入します。
そして実際に使ってみて良い買い物をしたと満足する。そしてまた買おうと思い、実際に再度購入する。
この再体験が前回同様かそれ以上に良ければ、ブランドのロイヤル顧客になり、これがブランディングの本質です。
そのため、ここでの問題は、満足体験を持っていない新規顧客や購買意向を持たない顧客に対して、
ロイヤル顧客が記憶した「ブランディング」要素を訴求すれば顧客獲得やロイヤル顧客化が達成できるか
のように誤解したマーケティング活動「ブランディング」至上主義が蔓延していることです。
「ブランド」は継続購買とその意思を強化する上で重要ですが、それは便益体験への満足の結果として
生まれるものであって、便益への満足を生み出す原因ではないのです。
論点15:ブランド価値を高めるには、洗練されたデザインが需要である。
回答:デザインは非常に需要です。なぜかというと、人が何かを好きになる要素は、人格、物語、デザインの
3つしかないからです。しかしながら、「好き」であることと「購買する意志」は必ずしも一致して
いないのです。そのため、その商品が顧客に提供できる便益と独自性をわかりやすく伝えると
いうことが土台であり、そのためにデザインがあるという順番を間違えてはいけません。
論点31:新しい製品やサービスと次々に出さないと売り上げは伸びない。
回答:多くの潜在顧客と取りこぼしたまま、新たに製品やサービス次々と打ち出し、それらの製品やサービスで
獲得した顧客をつなぎとめるためのコストがかさみ、全体として利益率が落ちていくケースが多い。
その原因は、既存の製品やサービスが本来視野に入れるべきマーケット全体を見ていないことにあります。
TAM(Total Addressable Market)という考え方があり、その製品やサービスで獲得可能な市場規模を
差しますが、この把握が正してくできていないケースが多く見受けられます。
論点38:価格でひきつければ、新規顧客の獲得につながる。
回答:価格プロモーションの極意は、価格そのものに無い。「一度試してさえもらえれば」と製品やサービス
の優秀さを確信できる時にのみ使う策で、本質的には諸刃の剣と心得よう。
論点40:カテゴリー内で圧倒的な差別化さえできれば、生き残れるのか?
回答:差別化は競合との比較になってしまうが、比較ではなく、絶対値としての便益、オンリーワンとしての
独自性を押し出せるものを考えることろから、製品設計やマーケティングの提案は本来スタート
しなくてはいけないのでは。
*9セグマップで顧客の解像度を高める。
「9セグマップ」とは、どのような顧客があどれだけいるのか、という顧客のセグメントを把握するためのツールです。
9セグマップは、2軸で構成されています。横軸は認知や購買実態によりロイヤル顧客(高頻度・高額購買)、一般顧客、離反顧客、認知・未購買顧客の5つに区分します。縦軸は次回購買意向があるか、ないかを見ていきます。
ほとんどのブランドや商品にとって、人数が多いのは6(消極/離反顧客)、8(消極/認知・未購買顧客)、9(未認知顧客)です。6はブランドやサービスを知っているのに使う意向がないので、1(積極/ロイヤル顧客)や3(積極/一般顧客)と同じことを言っても響かず、別の訴求を検討しなくてはなりません。
*コロナがマーケティングにもたらした5つの影響
①今回のコロナにより、何かが「変わった」ように見えるのは、実は今まで起こっていた傾向が加速しただけということ。
②何を大事に思うか、何にお金を使いたいかという、プライオリティ(優先順位)が変わった人がいること。
③マーケティングの意思決定でのスピードと柔軟性がさらに重要になったこと。
④最適なメディアミックスが大きく変わったこと。
⑤広告制作のクリエイティブのオプションが増えたこと。
*選択集中ではなく、ポートフォリオを持つ。
ポートフォリオを持ていない場合は、機敏な動きでカバーする。
*周囲の環境が大きく変わり、顧客の行動が変わるときに、本質的なニーズを突き詰めて考え、自社にできることを考える。顧客を起点にゼロベースで考えることで、従前のビジネスドメインそのものを柔軟に変えることができ、変化に対応できる。
<感想>
この本の最初に、コロナ関係なく予想外・想定外のことはどこかで起こっているので、コロナ禍に関係なくその変化に我々は対応しなくはならないと言っています。
個人的には賛成ですが、そうするとこの本のタイトルは単なる「詐欺」と言うことになりそうです(笑)。
ですので、普通のマーケティングの本として読んで頂ければ良いと思います。ただ、内容的にはあまり新しいことはありませんので、普段からマーケティングの最新情報を勉強されている方には必要なと思います。