前回の㈱武蔵野社長・小山昇氏の書籍等で紹介されていた一倉定氏の有名な書籍<1965年初版本の復刻版>です。
タイトル マネジメントへの挑戦<復刻版>
出版社 日経BP
著者 一倉定
価格(税別) 1,800円
中小企業経営者 ☆☆☆ ☆
中小企業診断士勉強者 ☆☆☆
<内容>
1.計画とは
計画とは、将来のことをあらかじめ決めることである。そしてあらかじめ決めてしまうのであるから、当然のこととしてその通り実地するという考え方が導き出される。
計画はしばしば変更することありというようなことは正しい態度ではないのである。計画にはそんな無責任な態度はゆるされない。あくまでもその通りにやるという責任がある。この責任感が計画の第一の要件である。
次にその通り実施するのであるから、計画以上でも、以下でもいけない。計画よりも早くても遅くてもいけないのである。
2.これだけ主義とできるだけ主義
できるだけ増産する、できるだけ原価を下げるという考え方をできるだけ主義という。最大限の努力を払うということであるが、できるだけというのがどれだけなのかということが誰にもわからない。
計画はいつまでに完成する、これだけ安くするというようにこれだけ主義でなくてはならない。事前に目標を明示して背水の陣をしき、何が何でもそれを実現するという決意と責任をもつことなのだ。
3.計画基礎は、①生きるため、②トップの意思である。
計画は過去の実績を元にしていたら、そこには進歩もなければ革新もうまれないのである。トップの意思と責任が明瞭に示されると、あとはどうしたらこれを実現できるかということになる。
きびしい現実に対処し、会社を発展させるものは、経営者の不退転の決意と行動である。実現可能なものを実現させるのであれば、経営者も経営担当者もいらない。
4.計画の思考法は経営方針
経営方針は経営者が自分の会社をこうしたい、こうする、という意思を表現したもの、会社の将来を決める最高の計画である。
経営は環境に順応することによってのみ生きられるのではなく、自らの力で変革することによってのみ存続できるのだ。これができるのは経営者の遺志のみであり、この意思を明文化したのが経営方針である。
5.作業改善の方法
①目標(新基準)の設定、②現状を調査、③新基準と現状のギャップを詰めるのが正しい考え方である。例えば売価の決定も、コストから決まるのではなく、売価からコストを決めるのが正しい。
6.実施とはやらせること
実施とはやることではなく、やらせることである。そのために計画が必要なのである。まず部下に計画、目標を知らせる。そして決めたことは守らせることが重要である。
7.問題とは何か
問題とは計画(標準)と現状の差である。計画がなければ問題もない。また存在するものではなく作り出すものである。つまり高い目標を設定した瞬間に問題が生まれるのである。
8.組織とは
組織とは事業の目標を達成するためのチーム編成である。したがって、組織は全て事業の目標達成のためにはどのような組織が必要かという考察から生まれてくるものである。明確な事業目標が無い所には立派は組織はありえないのである。良い組織とはバランスの取れた組織ではない。目標を達成するために重点に力を集中した、あるいは集中できる組織である。
9.責任と権限は等しくない
われわれの社会生活そのものが常に責任のみ重く、権限はほとんどないのである。権限があろうがなかろうと、責任を果たさなければならないのが社会の一員として、また会社に勤めるものの務めなのだ。
10.権限を委譲するのは部下に仕事をさせるためではない
部下のために上役がいるのではなく、上役のために部下がいるのだ。上役が前に進むための時間を生み出すために、部下に権限を委譲するのだ。前進するためには部下に仕事を任せる以外にない。部下が必要なのはここに真の理由がある。
11.有能な経営担当者とは
①自分自身を管理せよ
人を管理する前にまず自分自身を管理することであり、部下の仕事はなんであるかを考える前に自分の仕事はなんであるかを考えることである。部下に目標を与える前に、まず自分に高い目標を与えることである。
②上を向け
経営担当者にとって本当に大切なことは下を向くことではなく、まず上を向くことである。経営者にとって上とは顧客であり、顧客にとって良い会社、上役からみて良い部下になることである。上役が自分になにを求めているかをはっきりと認識することが必要である。
③すみやかに決断せよ
④目標を設定せよ
⑤結果に注目せよ
⑥時間を有効に利用せよ
⑦優先順位を決定せよ
⑧人の長所を利用せよ
12.お金に強くなれ
①直接原価計算による利益管理が必要
②売上年慶表による管理が必要
③未来事業費への投資が必要
④正しい生産性の把握:賃金は高く、工数は少なく(機械化)が近代的な姿である。
13.ラッカー・プラン
従業員が働かないのは、働いてもそれが本当に自分のためなるかどうかわからないからなのである。ラッカー・プランのもとに、労使一体となって生産性向上に励むことこそ、従業員の幸福を増進し、企業を発展に導き、ひいては広く社会への貢献を実現するものである。
<感想>
元々、いろいろな有名経営者(柳井氏、鳥羽氏など)が彼らの書籍やインタビューで一倉定氏の名前を出していたのでいつかはその書籍を読みたいと思っていました。今回過去の書籍の復刻版が出たという事で購入してみました。
前半は割と考え方とか姿勢などの話でしたが、後半はほぼ財務などのテクニカルな話でした。
前半は今の常識と異なる話もありましたが、中小企業の経営者には一倉氏の言っている事の方が有効であり、また大企業でも結局は企業の目標が社員に伝わっていないことが大きな問題なのだと再認識しました。
財務に関しては、結構専門的になりますが、経営者としては最低知っておかなければならない知識だと思います。
初版が出版されたのは1965年と55年前ですが、内容的には今でも通じるものだと思います。逆に言えば日本の経営は55年前からほとんど進歩していないともいえるかもしれません。
大企業に比べて中小企業の経営者はトップダウン的だと思いますが、きちんと事業計画を作り、その内容を従業員に伝えているかと聞かれると、ほとんどやっていないと思います。また、経理的な分析もできる人もかなり少ないと思います。
中小企業診断士の活躍の場はまだまだありそうです。