「遊ぶ鉄工所」に続く町工場ブック第二弾です。
この企業は「カンブリア宮殿」など多くのメディアに出ていますのでご存じの方も多いと思います。
商品としては曲がる食器が有名ですし、工場見学に来た親子の母親が子供に「ちゃんと勉強しないと、あのおじさんみないになっちゃうよ」と言ったのを聞いて奮発したという有名なエピソードもあります。
下請けから自社ブランドを持つメーカーへの変身という最も尊敬されるパターンですが、社長は何回も倒れるまで働いていますし、そのまま参考にすることは難しいと思いますが、いくつかヒントはもらえると思います。
タイトル 踊る町工場
出版社 ダイヤモンド社
著者 能作克治
価格(税別) 1,500円
中小企業経営者 ☆☆☆ ☆
中小企業診断士勉強者 ☆☆☆
<内容>
(1)出発点
伝統産業に対する偏見を払拭するために、そして「鋳造の魅力」「地域の魅力」「職人の実力」を知ってもらうために次の3つの取り組みを始めました。
①技術を磨いて問屋の信頼を得る
②自社製品を開発、販売する
③工場見学を受け入れる(産業観光に力を入れる)
(2)社員教育について
能作の考え方は」仕事に真剣に取り組み、夢中になっていれば、おのずと何をすべきが見えてくる」「人に教えられるより、自分で腹落ちした方が成長する」です。
人材育成に関する7つの考え方
①教えるのではなく、気づかせる
②教える人がいない方が、早く育つ
③個性を大切にする
④好きこそものの上手なれ
⑤「やりたいこと」はやらせてみる
⑥社長が率先して現場にでる
⑦多能工化に取り組む
(3)下請けからの脱却について
能作のある高岡市は鋳造産業の集積地で、他の伝統産業と同じく、問屋が商品企画をして下請け業者が分業して生産をする業務分担となっていました。
そこで、まず問屋からの信頼獲得のために、技術力の向上と多品種少量生産体制の構築を行います。
次に、「お客様の顔が見たい、問屋ではなくユーザーの評価を聞きたい」という思いから、問屋ルートはそのまま残して、新たに直販ルートを構築しました。
それからデザイン勉強会や展示会に出席し、そこから風鈴やまがる食器というヒット商品が生まれました。
アイディアを生み出す7つのルール
①人のまねをしない
②素材の性質を知りつくす
③他人の考えを否定しない(自分の考えに固執しない)
④美術品ではなく「生活に密着した製品」と作る
⑤蜘蛛の巣を張り巡らせて、情報をキャッチする
⑥デザイン力を磨く
⑦「軸」から外れない
(4)産業観光について
産業観光の目的は、「地域創生」「産地存続」「技術の伝承」などがあげられますが、一番の目的は「地元、高岡の子供たちに、地域の素晴らしさを知ってもらう」ことです。つまり、「子供たちを、変えていくこと」「子供たちが、自分の故郷を誇れるようにしていくこと」だと考えています。
(5)社長語録
①伝統とは革新の連続
②「選ばなかった正解」は存在しない
③物事を狭く見ない
④人の価値とは、一生のうち、どれだけの人を幸せにできるかで決まる
⑤とにかくやってみること
⑥何もしなければ、成功も失敗もない
⑦努力すれば結果はついてくる
(6)能作を黒字体質にした6つの理由
①技術を磨いて、製品の品質を高める
②量産に向く生型鋳造でありながら、「多品種少量生産」を目指す
③時間を大切にする(仕事に集中する時間を増やす)
④勉強会、セミナー、カンファレンスに参加して「ネットワーク」を広げる
⑤お客様の要望に100%応える
⑥より多くの人を幸せにできる選択をする
<感想>
何か凄いことをやったように見れますが、実際やられたことは凄く基本的な事だと思います。
まず、自社の強みを明確にして強化する。次に、お客様、市場の本当に欲しいものを探す。そのためには、情報を外部に探し、人の意見を参考にする。
そして、その前提として、企業として目指すもの、所はどこかを明確にして、社員や地域と共有する。
最後に、根性論ではなく、やり抜く。
私も個人的に参考にしたいと思います!!