先日吉野家ホールディングス会長の安部修仁氏の話を聞く機会がありました。
テーマは事業承継なのですが、それ以外でも大変興味深い内容をお聞きしましたので、今回はそちらをご紹介させて頂きたいと思います。
1.「うまい、早い、安い」が生まれた訳
安部氏は、ご存知のようにアルバイトから社長になった叩き上げですが、実質の創業者である2代目(松田瑞穂氏)と一緒に吉野屋の繁栄・栄光から倒産という奈落までを経験してきた生き字引のような方でした。その分お話には大変説得力があり、興味深く聞かせて頂きました。
最初のテーマですが、なぜ「うまい、早い、安い」が生まれたかです。
これは吉野家の生い立ちに関係しています。
ご存知の方も多いと思いますが、吉野家の第一号店は築地市場の中にできました。
そのため、顧客は市場で働く人、つまり新鮮な魚や野菜、果物を扱っている食のプロになります。そのため吉野家としては食のプロに満足してもらう美味しい食事を提供しなければならなかったのです。これがまず「うまい」が生まれた理由になります。
次に、彼らは忙しい中吉野家に食事に来ますので、提供時間が早ければ最高のサービスになるということで次の「早い」が生まれたそうです。
食堂としていろいろ提供できるサービスがあると思いますが、吉野家は提供時間の早さの優先順位を上げ、そのための努力をしていったそうです。
現在の吉野家のマニュアルでは提供時間は1分が最大という事になっているそうです。平均時間は30秒、この吉野家第一号店では15秒で提供されていたそうです。座れない人は立ちながら食べていたそうなので、そんな光景を見てしまうともっと早く提供してあげたいと思ってしまいますよね。
最後の「安い」は、吉野家がチェーン店展開をするようになって、チェーン店として継続してくためにコストの追及をし始めて生まれたとのこと。ですので、このコンセプトは後で追加されたということが分かります。
このようにターゲット顧客や会社の目標によって、会社、ブランドのコンセプトや方向性が生まれ、変わっていくことが実感でき、大変勉強になりました。
2.吉野家の人材育成方法
2つ目のトピックスは人材育成です。
今は忙しいとブラック企業と言われてしまいますが、やはりハードワークの中からしか生まれないものがあるそうです。
安部氏は、ハードワークをすることにより仕事に優先順位をつけれるようになり、個人の能力が向上していくと言っています。
そのため、吉野家では①個人の能力を少し超える課題を与える、②どのように対応するかを観察する、③結果を評価する、④次の場の提供をするというサイクルを続けることにより、リーダーを作っているそうです。
また課題は期限を短くしチャレンジ度を上げ、チームでの課題も与えることによりチームワークの形成にも役に立つとのことです。
ただ、最後はリーダーに指名された人が、覚悟を持ち、使命感を持つかで大きくかわるとのこと。使命感を持てば、自分の欲を超え、誰か、何かのためにという意識が強くなりますので、リーダーに最も必要な要素になるそうです。
安部氏は今の社長をこの方法で成長させ、最後説得に2年半かかったそうですが、無事事業の承継を終了させました。今は会長と言う職位になっていますが、会社の経営からは完全に引かれています。
皆さんの中でも後継者育成に苦労されている方もいらっしゃると思います。安部氏の方法を是非ご参考にされてください。
また、いろいろな所で事業承継セミナー等を行っておりますので、ご興味のある方はご連絡下さい。ご紹介させて頂きます。